Aisa Wide Communications

◆対馬丸〜さようなら沖縄 ドキュメント◆
荒海に放りだされて、人間のモロさも強さも知りました
●平良啓子さんの話=その時、9歳、宮城啓子
 海−、今の私には、悲しみの涙が流れ出す憎しみの海となりました。疎開船上で、祖母に抱かれて眠っていると、ズドーンという音で目がさめた、その時はもう海の中でした。タルにつかまり流されて、しばらくしてから竹で作ったイカダにたどりつきました。とにかくまわりは屍体がごろごろ浮いていて、その間をかきわけていったのです。最初の一日目の昼に飛行機が飛んでましたが手を振っても、そのまま行ってしまった。
 2日目の夜、腹がゴロゴロ鳴って便意をもよおしたので、モンペの紐をといていると、魚がイカダに飛び込んできた。私は紐がとけてるのもかまわず、魚をつかまえて“モンペを着るまで、もってて”と頼んで魚を預けたら、その人に食べられてしまった。
 3日目の夕方、5メートルくらい先に何か浮いてました。よく見ると三節くらいの竹筒でした。何か食べ物でも入っているようなので、イカダが近づくのを待ったのですがダメでした。誰かに“とっておいで”といわれて海に飛び込み、大慌てでとってくると、それにはあずき御飯がいっぱいつまってました。(赤飯のことです)みんな口々に“神様のおめぐみだ”といってました。みんなに配給しようと人数をあらためると、10人が8人になっていました。そしてその夜、母親の腕の中で乳呑児が死にました。
 4日目、みんなの顔は赤く、うす黒くやけてヒフはただれてました。私に、もたれていた80歳くらいのおばあさんは“うんうん”とうなりながら、私のそばから落ちていきました。助け上げたけど、もう死んでいました。

 5日目の夜明け、イカダのそばを流れていたマユをすくいあげました。小さな時に中の蛹が食べられると教わっていましたので、みんなに教えて食べました。太陽がものすごく暑く感じ、髪の毛はぶくぶく抜けます。腹はつめたくなり、背中にくっつくみたいでした。
 6日目には、イカダに乗っているのは5人だけでした。夕方、誰かが“あれ、島じゃないか”と叫び、指さした。そしてみんなで力いっぱいこぎ続けましたが、島に近づきませんでした。そして7日目の夜明けに、サラサラと岸うつ波の音を聞いたのです。あーぁ生きてて良かった・・・・・。
 海−幼い時には心のなごみでした。果てしなく夢が広がる海でした。太平洋に向かって大声で歌った、あの日がなつかしく思えます。(原作より)
小学校で習いおぼえた手旗信号が私を助けたんです
●仲宗根正男さんの話=当時高等科2年(14歳)
 私がつかまえたイカダには、はじめは誰もいなかったんです。暗い中で、海に飛び込んでしばらくは、まわりで叫んだり、わめいたりしていた人たちが、ものの1時間もしないうちに、一人も見えなくなり、声も聞こえなくなりました。一人ぼっちで夜を明かす、それも大海原で、イカダの上で、これは耐えられませんよ、普通では・・・・・。寒気がおそうんですよ、夜明けの太陽があんなに有難かったのは初めてでしたね。でもその有難い太陽が、今度はヒフをこがすんですね。お昼ごろ、別のイカダに出会いました。私一人よりも小さいのに7人も乗っていました。みんなこっちのイカダに乗り移ってきましたねぇ。とにかく暑さと眠さとひもじさで、みんなの中の誰かが、“船は見えないか”“島は見えないか”という。そうなんです、眠ったら、それは死なんですねぇ。でも海の不思議さがもうひとつありました。突然、仲間が一人増えたんです。それも船員だった。こっちのイカダに乗り移って、乱暴なくらいの言葉づかいをしました。そして、眠ってるものを張り飛ばしました。
 眠ると死ぬということは、それまでの例でみんな知ってましたので、その乱暴な船員のしぐさを非難するものはいませんでした。それでも、みんなすぐ眠りたがりました。船員は飽きずに何度も殴り飛ばし、そのうち殴り飛ばしても目が覚めない者がいると、太腿に短刀を突き刺した。さすがにその方法にはみんな目をさましました。血が出ると、“潮水だから大丈夫だ”といいながら、潮水をかけてましたね。そして、女生徒たちが苦しがって吐いて、全身をふるわせていると“血のかたまりを吐くまでは大丈夫だ、それまでに助け船がくるからね、きっと・・・・”といって“他の人を助けに行くから”と流木につかまり、すぐに姿が見えなくなりました。それからすぐに飛行機が飛んできて、みんなで手をふりましたがダメでした。そして、遠くに船が見えた時、ボクは学校で教わった手旗信号で“タスケテクレ”すると“ワカリマシタ”と何度もくり返すうちに船は近づき、救われたのです。(原作より)


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