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◆象のいない動物園◆
解説

 昭和18年、太平洋戦争下の上野動物園で、爆撃のために動物が町へ逃げ出せば、大きな混乱がおきる。それを防止するために、象をはじめとする多くの猛獣が殺された事件。小学2年生の国語教科書にも登場し、また絵本にもなっているため、ご存知の方も多いと思います。
 この作品は、そのストーリーをアニメ化したもので、実話によるアニメーション映画という初めてのこころみです。
 教科書に載っている物語では、象が殺されるところで話が終わっています。しかし、この映画では、終戦後、焼け跡のなかでけなげに生きる子供たちの"象を見たい"という夢が、ついにはインドからインディラを呼びよせるまでを描きます。
 この物語の前半部分、つまり、象が殺されるまでは、かつて映画化されたことがあります。昭和32年「象」で、山本嘉次郎の監督で、象係に榎本健一が主演しました。象と飼育係の愛情を中心に、戦争の悲しみを訴えたものでした。 
 今度は、戦後の子供たちを主人公に設定して、戦前戦後の暗い時代をリアルに描くだけでなく、子供たちの希望のシンボルとしての象、そして夢の実現という、あの時代にこそあった、ある意味での明るさ、人の心のやさしさ、子供たちの活力をほのぼのしたタッチで描き出しています。
 昭和57年3月、上野動物園は開園100周年を迎えました。その100年の歴史のなかでも、戦争のために動物たちを殺したということは、もっとも重要な事件であったとともに、平和こそ動物園存在の要であるということの証ともなっている出来事です。 
 今、この時代に、この物語を通して、生命を守ることに意味を、子どもたちに問いかけられると思います。

 また、この物語は、インドのネール首相から日本の子供たちに贈られた雌象、インディラの行進で幕が降ります。
 この象を呼びよせたのが、一通の子供の投書であり、台東区をはじめとする各区の子供議会であり、そして、その子供たちの願いを受けとめ直ぐに行動をおこした大人たちの力でした。この映画の中ではくわしくは描かれていませんが、ストーリーの裏には、終戦直後の民主主義のみずみずしい活躍があったのでした。
 制作は、TVアニメ「まんが日本昔ばなし」でおなじみのグループ・タック。シナリオは岸田戯曲賞受賞の斉藤憐。演出は「まんが日本昔ばなし」のチーフディレクターとして活躍した前田庸生。


【この解説は1982年に映画が完成した時に書かれたものです】


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